戸籍の束を何度も出さずに済む「法定相続情報一覧図」の使いどころ|横浜の司法書士が解説

法務局の窓口で戸籍の束と一枚の証明書を見比べる相続人のイラスト

こんにちは。横浜市青葉区の川村屋司法書士事務所、司法書士の川村亮太です。

相続の手続きは、金融機関、法務局、年金事務所と、いくつもの窓口を回ることになります。そのたびに求められるのが、亡くなった方の戸籍一式です。場合によっては何十枚にもなる束を、行く先々で出しては返してもらう。この繰り返しを一枚の紙で済ませられるのが、今回お話しする「法定相続情報一覧図」です。しかも、交付に費用はかかりません。

前回のコラムでは、相続登記の期限についてお伝えしました。今回は、その手続きを進めるときに手元にあると助かる書類の話です。

戸籍の束の代わりになる、法務局のお墨付き

平成29年(2017年)5月に始まった「法定相続情報証明制度」という仕組みがあります。

おおまかな流れはこうです。まず相続人が、集めた戸籍をもとに「誰が相続人なのか」を示した一覧図を作る。それを戸籍一式と一緒に法務局へ出す。登記官が中身を照らし合わせて、間違いがなければ「これは当局が保管している一覧図の写しです」という認証文を付けた写しを交付してくれる。

この写しが、戸籍の束の代わりになります。必要な通数を無料でもらえますので、取引のあった金融機関が3か所あるなら3枚、といった形で受け取っておけば、あちこちに束を出し直す必要がなくなります。

一覧図と聞くと、家系図のようなものを想像されるかもしれません。だいたいそのイメージで合っているのですが、書き方にはある程度決まった形があります。A4サイズの丈夫な紙を使うこと、亡くなった方を起点に線で結んで関係が一目で分かる図にすること、続柄の書き方、代襲相続があるときの表し方。こうした点が細かく定められています。

とはいえ、ゼロから考える必要はありません。法務局のサイトに「配偶者と子の場合」「代襲相続がある場合」など、ケース別のひな形と記載例が公開されています。ご自身の家族構成に近いものを選んで書き込んでいくのが確実です。

なお、亡くなった方や相続人が日本国籍をお持ちでないなど、戸籍を提出できないケースでは、この制度自体を利用できません。

使えるのは相続登記だけではありません

相続登記はもちろんですが、それ以外にも幅広く使えます。亡くなった方名義の預金の払戻し、相続税の申告、それに遺族年金や未支給年金といった年金関係の手続き。年金については、2020年10月26日から使えるようになりました。自動車の名義変更などでも使われています。

ただ、提出先によっては「これ一枚では足りない」ということもあります。法務局も「利用できるか分からない場合は提出先の機関に問い合わせてください」と案内しています。手続きの前に、提出を予定している先へ事前確認をしておくと安心です。

相続税の申告に使う場合は、続柄の書き方に注意

一覧図の続柄は、申出をする方の書き方次第で「子」とまとめて書くこともできます。ただし、相続税の申告書に添付する場合は、「長男」「長女」「養子」のように戸籍どおりの続柄を書いた、図形式のものでなければ使えないこととされています。相続人を単に並べただけの列挙形式も対象外です。実子か養子かの別や、法定相続分が読み取れないからです。相続税の申告が出てきそうなご家庭では、最初から戸籍どおりの続柄で作っておくほうが後々ラクだと思います。なお、養子がいる場合はその方の戸籍謄本を別に添付することも必要です。相続税申告手続きそのものについては、税理士か税務署にご確認ください。

手続きは3つのステップ

1つ目は書類集めです。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、住民票の除票、相続人全員の現在の戸籍。それに申出をする方の運転免許証のコピーなど、氏名と住所が確認できる書類です。戸籍集めについては、前回お話しした広域交付制度も使えます。

2つ目が一覧図の作成。先ほどのひな形を使う場面です。

3つ目が法務局への申出です。ここで意外と知られていないのが、申出先を4か所から選べること。亡くなった方の本籍地、最後の住所地、申出をする方の住所地、そして亡くなった方名義の不動産の所在地。このどれかを管轄する法務局であれば構いません。窓口へ持参するほか、郵送でも申出できます。

費用は無料です(戸籍を取るときの手数料や郵送代は別にかかります)。交付までの日数は法務局によって違います。WEB上での案内では、横浜地方法務局管内はおおむね5営業日程度で発行。としていますが、実際には(不動産登記の登記完了予定と同様に)2~3週間かかるのが通常です。

相続登記と一緒に行うこともできますし、銀行の解約を先に済ませたい方であれば、一覧図を先に取って登記は後から、という順番でも構いません。ご事情に合わせて選んでいただけます。

一覧図は、申出をした年の翌年から数えて5年間、法務局で保管され、この間は写しの再交付を受けられます。ただし再交付を申し出られるのは、最初に申出をしたご本人だけです。

一覧図に載る人と、載らない人

ここが一番の注意点かもしれません。

一覧図に書かれるのは、戸籍から読み取れる法定相続人です。ですから、相続放棄をした方も、遺産分割の話し合いで何も受け取らないことになった方も、名前はそのまま載ります。交付される写しの下部にも「相続放棄に関しては、本書面に記載されない」という注意書きが印字されます。

「この一覧図があれば、誰が何を相続するかまで証明できる」と思われがちなのですが、そうではありません。あくまで戸籍謄本の束の代わりの書類という建付けであるため、「法律のルールでいえば相続人はこの方たちです」という証明書です。実際に誰がどの財産を取得するかは、遺産分割協議書や相続放棄申述受理証明書といった別の書類で示すことになります。

反対に、家庭裁判所の手続きで廃除された方については、相続権を失っているため一覧図には記載されません。

なお、お父様の相続が終わらないうちにお母様も亡くなった、というように相続が重なっている場合は、亡くなった方お一人につき一つの一覧図が必要になります。この点はまた別の機会に触れます。

2024年4月から使えるようになった「法定相続情報番号」

一覧図の写しの右肩には、法定相続情報番号という番号が印字されています。2024年4月1日から、不動産登記の申請書にこの番号を記載すれば、写しの原本を添付しなくてよくなりました。一覧図に相続人の住所まで書いてあれば、住所を証する書面(住民票)の添付も省けます。相続登記が義務になったのと同じ日からの取り扱いです。

便利な仕組みですが、使える範囲は限られています。まず、法務局で行う不動産登記の申請等でしか使えません。銀行や年金事務所ではこの番号は通用しませんので、紙の写しが必要です。

もうひとつ、申出から5年以上経っていると使えないことがあります。法務局に保管された一覧図の記録の保存期間が、作成した年の翌年から5年間と決まっているためです。期間が過ぎた記録は他の帳簿と同じように廃棄されますので、番号で照会しても確認できなくなる、という理屈です。ただし、すでに交付を受けている紙の写しの原本のほうは、5年を過ぎても添付書類として使えます。手元にある写しは、捨てずに取っておいてください。

取ったほうがいい人、そこまででもない人

相続人が少なく、提出先も1、2か所という場合は、戸籍の束をそのまま使い回したほうが早いこともあります。一覧図を作って申出をする手間の分だけ、遠回りになりかねません。

一方で、不動産が複数の法務局の管轄にまたがっている、取引のあった金融機関が多い、年金の手続きと相続登記を並行して進めたい、相続人が多い。こうしたときは、最初に一覧図を取っておくと、その後がだいぶ楽になります。感覚的には、「戸籍の束を出す回数が3回を超えそうなら、作る価値がある」といった具合でしょうか。

この法務局への申出手続きは、ご本人で行うことのほか、司法書士などの資格者に頼むこともできます。戸籍を読み解いて相続人を確定する部分は、慣れていないと判断に迷うところです。集めた戸籍を前に手が止まってしまったら、その段階でご相談いただいても遅くはありません。

ご相談はお気軽に

法定相続情報一覧図について、ご不明な点やご自身のケースについてのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。「戸籍は集めたけれど、この先どう進めればいいのか分からない」という段階でも構いません。

初回相談は無料で対応しております。司法書士には守秘義務がありますので、安心してご相談ください。

川村屋司法書士事務所 横浜市青葉区すすき野|相続・遺言・不動産登記のご相談

👉 メールでのお問い合わせはこちら 👉 LINEでのお問い合わせはこちら