戸籍の広域交付制度とは?相続の戸籍集めで使えるとき・使えないとき

市区町村役所の窓口で職員から戸籍書類を受け取る来庁者のイラスト

こんにちは。横浜市青葉区の川村屋司法書士事務所、司法書士の川村亮太です。

相続のご相談を受けていると、「亡くなった父の戸籍を集めるだけで、役所を何往復もした」「郵送でやり取りしているうちに、いつの間にか2か月経っていた」というお話をよく耳にします。相続登記のご依頼でも、この戸籍集めが最初のひと山になることがほとんどでした。

その戸籍集めが、2024年3月1日に始まった「戸籍の広域交付」という制度で変わりました。本籍地が全国どこにあっても、お住まいの近くの市区町村の窓口でまとめて戸籍を取れるようになっています。

ただ、相談の場では「思っていたのと少し違った」という声も聞きます。何ができて、何ができないのか。相続の実務から見た使いどころを整理します。相続手続きの全体像は、前回のコラム「相続登記の義務化」と合わせてお読みいただくと、つかみやすいかと思います。

そもそも、相続の戸籍集めはなぜ手間がかかるのか

亡くなった方の不動産の名義を変える、預金を解約する、相続放棄をする。こうした手続きのほとんどで求められるのが、「亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を、切れ目なく全部そろえること」です。

意外に知られていないのですが、一人の方の戸籍は、たいてい複数に分かれています。結婚して新しい戸籍がつくられる、本籍地を別の市区町村へ移す(転籍)、戸籍の様式が新しく作り直される(改製)。こうした節目のたびに、その方の記録は次の戸籍へと引き継がれていきます。

たとえば80代で亡くなった方が、これまで本籍地を5回6回と移していれば、その数だけ別々の市区町村とやり取りすることになります。

以前は、本籍地が遠ければ郵送で請求するしかありませんでした。請求書を書き、定額小為替を郵便局で買い、返信用の封筒に切手を貼って送る。届いた戸籍を読んで「次は〇〇県の○○市か」と分かり、その役所へまた郵送する。この繰り返しで、一式そろうまでに1〜2か月かかることも珍しくありませんでした。

広域交付制度で、こう変わりました

新しい制度を平たく言えば、「本籍地に直接請求しなくても、近くの市区町村の窓口で、全国の戸籍をまとめて取れる」ようになった、ということです。

たとえば、青葉区にお住まいの方で、ご両親の本籍地が北海道、ご祖父母の本籍地が九州にあるとします。これまでなら少なくとも3か所に郵送していたところを、いまは青葉区役所の窓口で「父の出生からの戸籍と、祖父母の戸籍も」と、一度に請求できます。

法務省が運用する「戸籍情報連携システム」を通じて、窓口の市区町村が他の市区町村の戸籍データを取り寄せて発行する仕組みです。郵送のような往復の待ち時間がなくなり、相続手続きの最初の負担が、ひとつ減りました。

手数料は、これまで窓口で取るときと変わりません。「便利になった分だけ割高になるのでは」と心配される方もいますが、その点は大丈夫です。

広域交付で取れない戸籍もあります

間違いなく便利になった一方で、これで戸籍集めがすべて片づくわけではありません。誤解したまま窓口へ行って、目当ての戸籍が取れなかった、ということが起きやすいところでもあります。相談の現場でよくお伝えしている点です。

兄弟姉妹やおじ・おばの戸籍は取れません

広域交付で請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属(父母や祖父母)・直系卑属(子や孫)の戸籍に限られます。横のつながり、つまり兄弟姉妹やおじ・おば、甥・姪の戸籍は対象外です。

たとえば、お子さんのいないご夫婦で片方が亡くなり、相続人が配偶者と、亡くなった方の兄弟姉妹になるケース。相続の現場ではよくある場面です。このとき配偶者の方は、亡くなったご主人(や奥様)の戸籍は広域交付で取れても、その兄弟姉妹の戸籍までは取れません。兄弟姉妹が相続人になる相続では、結局これまでどおり、それぞれの本籍地への請求が必要になります。

古い戸籍は対象外のことがあります

広域交付は戸籍のデータをオンラインでやり取りする仕組みなので、そもそもデータになっていない戸籍は取れません。手書きのまま残っている古い除籍や、災害などで原本が失われている戸籍は、本籍地でしか取れないことがあります。

祖父母より前の代までさかのぼる必要があるケース、たとえば何代か前の相続がそのままになっていた場合には、広域交付だけでは足りないとお考えください。

郵送や代理人ではなく、本人が窓口へ

請求できるご本人が、窓口へ出向く必要があります。委任状を用意しても、代理人が広域交付で取ることはできません。私たち司法書士が、相続登記のご依頼を受けて代わりに広域交付で集めることも認められていません。

窓口では、運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの本人確認書類の提示が必要です。顔写真のない書類だけでは受け付けてもらえません。

平日の日中に区役所へ行くのは、お勤めの方にとってはそれなりの手間です。「便利になった」とだけ聞いていると、ここで予定が狂うことがあります。

その場で受け取れないこともあります

窓口の市区町村は、本籍地の市区町村に内容を確認してから戸籍を発行します。そのため、待ち時間は通常の請求より長くなりがちです。横浜市でも、混み合っていると当日中に発行できず、後日の受け取りになる場合があるとしています。国のシステムに不具合が出れば、その日は広域交付そのものが使えないこともあります。

また、窓口によっては、広域交付の受付時間が通常の開庁時間より短く設定されていることもあるようです。出向く前に区役所のサイトで受付時間を確認し、できれば午前中のうちに窓口へ行くことをおすすめします。

内容の確認は必要

これは戸籍の広域交付制度が直接の原因ではないと思われるのですが、

広域交付制度を利用して他県の戸籍謄本も取得された方の戸籍をチェックしていたころ、過去は以下のようなケースがありました。

  1. 一部のページが抜けている
  2. 本来必要となる戸籍が一通不足している

まれにこのようなことが起こり得るので、発行されたものが本当に必要な内容をすべて満たしているかどうかを改めて確認する必要があります。

自分で集める部分と、頼む部分

広域交付のおかげで、自分で戸籍を集められる範囲は広がりました。
親から子への相続(直系の相続)で、相続人の数も多くなければ、平日に半日ほど都合をつけられる方なら戸籍集めはご自身で進められることも増えています。

一方で、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる、何代か前の相続が残っている、集めた戸籍を読み解いて相続人を確定する、相続登記や預金の解約に向けて相続関係説明図や法定相続情報一覧図を整える。このあたりは、戸籍を集めただけでは終わりません。

さらに、戸籍以外に必要な書類もあります。たとえば住所のつながりを示す住民票の除票や戸籍の附票などは広域交付では取れず、別に請求することになります。

ご自身で取れるところまでやってみて、行き詰まったところで相談する、という進め方もできます。

迷ったら、早めにご相談を

戸籍の広域交付は、相続手続きの入口を軽くしてくれる制度です。ただ、ご自身のケースで広域交付が使えるのか、それとも従来どおりの請求が要るのかは、相続人の顔ぶれや世代によって変わってきます。

「父が亡くなったが、何から手をつけていいか分からない」「途中まで戸籍を集めたが、これで足りているのか不安」「どうやら兄弟姉妹の相続らしく、戸籍の集め方からして難しそう」。このあたりまで来たら、一度ご相談ください。ご自身で進める部分と、頼んだほうがよい部分の見立てだけでも、お役に立てるかと思います。

具体的なトラブルになっていなくても、「まず話を聞いてみたい」という段階で構いません。初回相談は無料です。司法書士には守秘義務がありますので、ご家族の事情も含めて安心してお話しください。

川村屋司法書士事務所 横浜市青葉区すすき野|相続・遺言・不動産登記のご相談

👉 メールでのお問い合わせはこちら 👉 LINEでのお問い合わせはこちら