相続登記をしていない不動産は「共有状態」です──放置と共有のリスクを横浜の司法書士が解説

相続登記をしないまま関係者が増えた実家を、大勢の親族が困った表情で囲んでいるイラスト

こんにちは。横浜市青葉区の川村屋司法書士事務所、司法書士の川村亮太です。

「親が亡くなったけれど、実家の名義はまだ父のまま。揉めているわけでもないし、急ぐ理由もない」

相続のご相談で、よく耳にするお話です。急がない、揉めていない、それ自体は心情として自然ですし、確かに、急がなくてもいいように見えます。

ただ、少しだけ気にかけていただきたい話があります。登記が父の名義のままだとしても、その不動産は、法律上はもう相続人全員に引き継がれています。遺産分割の話し合いがまとまるまでの間、相続人全員による暫定的な共有として扱われる。「まだ何もしていない」ではなく、「共有の状態はすでに始まっていて、それをそのままにしている」、というのが実体なのです。

見えないところで進んでいるこの共有を、そのままにしておくとどのようなことが起こり得るのか。相続登記の義務化を扱った以前のコラムと合わせてお読みいただくと、話の輪郭がつかみやすいかと思います。

登記していなくても、共有はもう始まっています

相続が発生した瞬間から、遺産分割の話し合いがまとまるまでの間、遺産は法律で定められた割合(法定相続分)で、相続人全員が引き継いだ状態になります。

たとえば、父が亡くなり、相続人が母と子2人だったとします。実家の名義がまだ父のままであったとしても、法律上は「母が4分の2、子がそれぞれ4分の1ずつ」を引き継いでいることになります。登記をしていないからその状態がまだ発生していない、という理屈は通りません。亡くなった方は所有権を持てないからです。

ただ、この4分の2や4分の1という数字は、あくまで話し合いをするまでの「とりあえずの目安」です。実際の分け方は、遺言書がない場合は、相続人全員の話し合いの中で最終的に決まり、確定します。法定相続分は法律が用意した計算式であって、家族それぞれの事情まで映しているわけではありません。

そのままだと、動かせない不動産になります

暫定的な共有とはいえ、一人の判断で自由にできないという点は、通常の共有と変わりません。

実家を売ろうとすれば、少なくとも相続人の誰かに名義変更を行う必要があります。例えば、連絡がつかない相続人がいる場合は、それだけでその不動産は動かせなくなります。

一方で、固定資産税の支払いや、荒れないための最低限の手入れは、話し合いが決まっていようがいまいが続きます。手放そうにも手放せない、しかし負担だけは続く。この状態が、ときに何年、何十年と続いていく——というのが、放置の怖さです。

時間が経つほど、話し合う相手は増えていく

とはいえ、本当の怖さはここからです。

相続人の一人が亡くなると、その方が引き継いでいた分は、さらにその方の相続人へと引き継がれていきます。数次相続と呼ばれる仕組みです。

祖父が亡くなったときの相続人が子3人だったとします。話し合いをしないまま年月が経ち、その子たちも順に亡くなると、それぞれの配偶者や子——祖父から見れば孫の世代——に権利が広がっていく。当初は3人で済んだはずの話し合いが、気がつけば7人、8人、10人。しかも、面識のないいとこどうしで日程調整から始める、ということも起こります。極端な例ではなく、相続のご相談でも折に触れて出会う話です。

こうなると、戸籍をたどって関係者を全員洗い出すだけでも大仕事です(戸籍集めの負担については、前回のコラム「戸籍の広域交付制度とは?」で触れました)。

早めの相続登記が、いちばんの予防

ここまでのリスクは、裏を返せばシンプルな話です。相続人がお元気で、顔ぶれが少ないうちに遺産分割の話し合いをして、引き継ぐ方の名義で登記まで済ませておく。それだけで、暫定的な共有が続いていくことも、数次相続で人数が膨らんでいくことも、まとめて防げます。

2024年4月からは、相続登記そのものが法律上の義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。義務化の施行より前に始まっていた相続も対象なので、「昔の話だから」で片づけるわけにもいきません(詳しくは以前のコラム「相続登記の義務化はいつから?」をご覧ください)。

実務の感覚として率直に申し上げると、義務化がなかったとしても、早めに相続登記を済ましておくことはご家族にとってメリットです。義務違反や過料を避けるためというより、面倒が今のうちに片づくから。という点が大きいです。

すでに共有名義で登記しているケース

「とりあえず法定相続分どおり、兄弟の共有名義で登記した」という事例もあります。この場合、登記は済んでいますから暫定的な共有は解消していますが、不動産は共有された状態で確定しているので、そのままにすれば相続のたびに関わる方が増えていく点は同じです。どこかの段階で共有を解消しておくと、この先が楽になります。

解消の方法は、持分をお互いに交換する、売買や贈与で誰か一人に集める、土地を測って分ける、全員で売却して代金を分ける、といったところです。どれが合うかはご事情次第で、土地を物理的に分けるなら土地家屋調査士、売却には不動産業者、税金の判断には税理士と、方法によって関わる専門家も変わります。当事務所が入口になって、必要な連携先と一緒に進めることもできます。共有の解消そのものは大きなテーマですので、いずれ別の記事で改めてお伝えします。

「うちの実家、名義そのままかも」と思ったら

親の名義のまま気になっている不動産がある方、相続人が増えてしまって話し合いに気が重い方。まずは現状を整理して、何から着手すればよいかの見立てをつけるところから、お手伝いできます。

具体的なトラブルになっていなくても、「まずは話を聞いてみたい」という段階で構いません。初回相談は無料です。司法書士には守秘義務がありますので、ご家族の事情も含めて安心してお話しください。

川村屋司法書士事務所 横浜市青葉区すすき野|相続・遺言・不動産登記のご相談

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